いいか、よく聞け。今からお前を仮死状態にする。この弾がお前の心臓を一時的に止める。なぁに、しばしの眠りだ。死にはしない。そうして身を守れ。奴らは何が目的か知らんが死体には興味を持たねぇ。だから安心しろ。生きてるあいだに棺桶入れるのは、案外お得かもしれねぇぞ?
……落ち着けダメツナ。
何度も言うが、俺は、一緒に行けない。
そんな顔するな。呼吸するのだって、こっちは少し苦しいんだから。これ以上、何も言わせないでくれ。
苦しくなるだろうが。なぁ。
さようなら、俺の最期の生徒。誇りを持って生きろ、死ぬ気でな!
Arrivederci。
制止さえ意味を成さない中、告げられた別れの言葉に涙が溢れる。硝煙と白い靄。胸を容赦なく蹴飛ばされたような衝撃。リボーン、という彼の名前を叫んだ自身の声。
それが俺の、最後に感じた世界の全てだった。
せめてツナの棺桶に入ってた理由が仮死状態で身を守って~…ってことだったらよかったのに、という妄想。
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軽口と括るには邪悪過ぎるいつもの言葉遊びをしながらも、車の窓ガラスを通して運転席を照らす西日に、俺は思わず目を細めた。唯一俺の紅瞳を守ってくれている知覚眼鏡は、残念ながらサングラスの代替品にはなりえない(所詮は測定器だということだろう)。
「なんだ、ガユスは本体さえ役立たずなようだな。眼鏡置場」
「阿保。太陽が俺のかっこよさに嫉妬しているだけだろう?このくらいお熱いほうが好みだ」
「…貴様の中でも稀にみる、最低ラインのジョークだな」
「そりゃあどうも」
言いながらも一旦停止。知覚眼鏡を一先ず外すことにする。こういうときは、伊達であるなら尚更、レンズは視界を悪くするだろうと思ったからだ。証拠に、目が陽光に当てられて、うっすら涙が浮かんでいるのがわかる。
「……? なんだよ」
そんな時不意に視線を感じて、こちらをじっと見てくる相棒に訝しげに問うた。
「………いや、」
いつも迷いの無いこいつにしては珍しく言い淀み、はぁ、という溜め息がそれを締める。
「眼鏡を取るな、ガユス。それじゃあお前の居る意味を成さなくなるぞ」
…次いで出た相変わらずの憎まれ口に、自分の付き合いのよさとお喋り癖を、心から嫌悪した。はぁ。
拍手にしようとしてたものその2。