彼のファミリーネームはもちろん知っていたし、そう呼んでる子だっているのも知っている。彼は地球でいう東洋の方を祖先に持っているからか、あまり馴れ馴れしいことを好まない。それ故彼は名前で呼ばれるより寧ろそっちで呼ばれる方を好いていたようだが、男同士となるとそういうのは気持ち悪いのでで僕はカオルをカオルと呼ぶ。彼は僕のことが気に食わないらしいので余計に嫌な顔をする、呼ぶ度に。
僕は部屋が一緒になるまでここまで嫌われているとは思わなかったので、段々と彼の名前を呼ぶということが正直億劫になった。けれど彼に呼び掛けるときをお粗末にはしたくなく、仕方がないのであの気が滅入るほど嫌悪に満ちた顔に睨み付けられることを覚悟で、彼を呼ぶ。
「×××」
一度だけ、ファミリーネームを口にして、彼を呼び止めたことがある。彼は不自然な顔をして立ち止まり、僕を見た。
「………きもちわるい」
カオルはなんだか居心地がひどく悪い顔をしながら、それだけ口にすると僕の用件なんて聞きもせずに行ってしまう。
ひどいなぁと思いながら、変にくすぐったくなるのはどういうことなんだろうか。
***
カオルのファミリーネームが気になる木。とかそういう話。
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