※骸髑死ネタです
「凪、」
声がする。そう、微かな意識が告げている。起きなくちゃいけない。彼が呼んでいるのだ。そうだ、私は起きなくちゃ、
「…むくろ、さ…ま」
唇が動く度、切れた咥内が軋む。言葉なんか出てこない。でも答えなければいけないんだ。骸様が私を呼んで下さるなら、いつだってどんな時だって笑ってみせる。だから、出来るだけ口角を上げて、その二色の瞳を片目で見上げる。元々そんなに左目の視力は良くないから、意識が朦朧としたこんな中では陽炎のようにゆらゆらと、その六の文字が瞳の中で揺れていた。
「きみは、もう眠ってしまうのですか」
「……」
内臓がずきずきと痛む感覚を覚える。空っぽのはずな右目が疼く。でも、それ意外のものは全て曖昧で、鳴呼、貴方がくれたもの以外、私の身体はあの時に死んでいたんだって、漸く悟った。
だからもう、限界なんだ。多分。息を吸い込んで吐き出して、心臓だけ早鐘を打って、血液が逆流している。もう駄目なんだろう。だから私は少しだけこくりと頷いた。
「そうですか。残念です、凪……いえ、クローム髑髏」
きっぱりとした声。ちっとも残念そうじゃないすっぱりした声。でも六の字は相変わらず揺れていた。ゆらゆら。
「…おやすみなさい」
また輪廻の果てで。
額に触れた温かな唇。軽いリップ音と共に離れたそれに、私は目尻に溜まった涙を瞬きして落とす。それから静かに目を閉じて、おやすみなさいと返した。
口の中は結局塩っ辛くて、伝った涙はしょっぱかったけれど、それらはまるで睡眠薬のように自分の体へと浸透していく。私は急速に世界から遠ざかっていくことを知りながらも、幾度も巡る彼が寂しく無いことを切に思うことしか出来なかった。
千種より髑髏ちゃんのほうがそれっぽかったからこっちに。
6/10は六道さんの日ですよ-。ということで(笑)
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