好きだなんて子供じみた感情を彼が許すはずが無いことくらい知っていたから、俺はずっと距離を置いてきたつもりだったし、女とも寝たし人も殺した。彼が知らない俺になれば自然と距離が出来るだろうなんて思ったせいで、今でも苦手な煙草を持ち歩くのを止めることが出来ないでいる。蝕んでいく煙が侵食していくヤニ臭さが、もどかしさとか平常心とか、そういう当たり前のものをゆっくりと作り上げていくのは奇妙な感覚だった。平然とそういったものを依存することで欠落を選んだ自分には、特に。
だからいけなかった。今日がたまたまあいつの帰宅日で、俺の仕事が些かきつくて、煙草を買いに行く機会を逃して。それが悪かったんだ、きっと、だから。
「俺にしとけ、ツナ」
呟かれた声音が嫌に低くて泣きそうになる。彼は俺が無を言わないのを知っている。知っているから俺は頷けない。
どうしたら彼に気付かれないように涙を零せるのか、知らない俺はただ圧倒的に不利だった。
Title Thanks!!『不在証明』
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意味の分からない多分リボツナ。
多分荒んだツナが書きたかった。
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