雲雀がないた。
「やまもと、たけし」
ぽたぽたと垂れる涙があんまりにも綺麗なもんだから、俺は瞬きも忘れて見入った。
雲雀が俺のことを呼んで、泣いている。夢みたいだ。
「やまもとたけし」
ぎゅうと抱き締められても俺はふわふわとしたままで、嗅ぎ慣れた雲雀の匂いをゆっくりと吸い込む。
なあ、ひばり、ひばり。何がこわい?誰に泣かされた?
「きみに」
「おれに?」
雲雀はとうとうと、君は前線に突っ込み、弱いくせにそうやって僕のことを守って死んだ。何にも考えてない君に腹が立って、涙が止まらない。と俺に説教をした。
「よくわかんねーなー。それ、夢?」
「そう」
「…理不尽じゃね?」
楯突くの、と怒られて、俺はよくわからないままごめん、と謝った。雲雀は泣きながら俺をぼかりと殴った。痛い。
「…君は早く強くなって、僕の相手だけしていればいいのに」
「なんかそれ、雲雀に殺されそうだな」
「そうだよ。僕にしか殺されてはダメだよ」
「あはは、ほんと、雲雀は理不尽なのなー」
俺にはよくわからない。
最近、ようやく何かとんでもないことに巻き込まれているのだと自覚をし始めたところだ。でもそれでツナや小僧を恨んだりなんかしないし、困っているならいつだって駆けつけて、助けてやりたい。
大事な人を守るためならと、剣士としての覚悟も未来で学んだ。でも今はやっぱり、野球をしていたいと思う自分が、一番自分らしいと思う。
でも、雲雀。俺はお前を守って死んで、そうやって綺麗な涙を流して貰えたら、それはいいことだなあと今少し、思えた。馬鹿みたいかな。なあ。
そんなことは口には出さず、代わりにキスでもしようとして、嫌がられた。
理不尽、だ。
**
復活最終回、おめでとうございます。あまり関係ない内容ですが、本当にありがとうを言いたくて。
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悲しい顔が心底似合わないやつだと思う。ぼんやりと人口の暗い照明に照らされた奴の顔は、ひどくくたびれて、悲しいのを押し殺しているように見えた。透き通った銀髪はまだ少し、濡れている。
思えば、こいつは昔から人前ではが決して泣かない。人の心配の種にはならないように、いつもぴんと背筋を伸ばし、快活に笑う。それがこいつの癖だ、悲しい時の。それが気にくわなくて、それを無理に解かせてしまったのが、そもそもこの関係の始まりだった気がする。
こいつが泣くのは俺の前だけ。
それは面倒臭く、らしくもない優越感にも俺を浸らせる。
だから、
「十秒だけ、お前の好きにさせてやろうか」
薄い色彩の瞳を覆う瞼をぱちぱちと瞬かせ、ルイは口元を苦笑するように歪める。
「それじゃ、キスくらいしか出来ないじゃない」
「しないのか」
「…ずるいなあ」
笑わせてやるのも、俺の役目だろう。
***
発掘ったルイカオ。じぶんで悶えた。さすが俺得
彼のファミリーネームはもちろん知っていたし、そう呼んでる子だっているのも知っている。彼は地球でいう東洋の方を祖先に持っているからか、あまり馴れ馴れしいことを好まない。それ故彼は名前で呼ばれるより寧ろそっちで呼ばれる方を好いていたようだが、男同士となるとそういうのは気持ち悪いのでで僕はカオルをカオルと呼ぶ。彼は僕のことが気に食わないらしいので余計に嫌な顔をする、呼ぶ度に。
僕は部屋が一緒になるまでここまで嫌われているとは思わなかったので、段々と彼の名前を呼ぶということが正直億劫になった。けれど彼に呼び掛けるときをお粗末にはしたくなく、仕方がないのであの気が滅入るほど嫌悪に満ちた顔に睨み付けられることを覚悟で、彼を呼ぶ。
「×××」
一度だけ、ファミリーネームを口にして、彼を呼び止めたことがある。彼は不自然な顔をして立ち止まり、僕を見た。
「………きもちわるい」
カオルはなんだか居心地がひどく悪い顔をしながら、それだけ口にすると僕の用件なんて聞きもせずに行ってしまう。
ひどいなぁと思いながら、変にくすぐったくなるのはどういうことなんだろうか。
***
カオルのファミリーネームが気になる木。とかそういう話。