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2007.07.07 Sat 「 七夕 」 携帯
※パラレルっぽいもの

笹の葉さらさらと商店街の一角がお馴染みの曲を流している。近くには「あなたの願いごとを書いてみては…」と妙な余韻の気になるフレーズと共に短冊が置かれている。隣にある竹には自分で吊せということなのか、ご丁寧にも紐付きだ。
こういう季節的な特設ものならば、子供一人居ても良さそうなものだが。まぁ、確かに八時を過ぎてこんなところに児童はこないだろう。それにしたって、今日は人がいない。
にしても、七夕飾りとは風流だな懐かしいなぁと思わず手に取ってから、山本は思わず口元を綻ばしてしまう。親父に言われた配達は一応済んだ後ではあるし、少しなら大丈夫だろうと、一緒に置いてあるペンを取り上げて願い事を悩んでみることにする。
あいつはこういうの好きだったりするのかな、と山本はふと同じ学校に通う先輩の顔を思い浮かべた。不機嫌そうに細められることが多い切れ目に、妙に一本一本が柔らかく細い黒髪。山本は先輩であるはずの彼を、勝手に苗字の「ヒバリ」と呼び捨てにすることにしている。そうすると怒るから(我ながらちょっと悪趣味だ)。
彼とつるむ(否、一方的に絡む)ようになったきっかけは、極些細。端的に言えば、理不尽な暴力を奮う彼を前にして、魅せられてしまったのだ。
相手の血と共に舞いながら金属(とんふぁー、というらしい。よくは知らない)で相手を嬲り、実に楽しそうに、そして最後につまらなそうに溜息をつくその姿に。
艷かしい。まさか、そんな感情を同性に抱く日が来るとは。
元から彼の学校を舞台とした恐怖政治の存在は知っていたのだが、まぁ山本としては関わることはないだろうなと思ったし、そのつもりだった。しかし一年のあの秋、その姿に心打たれて以来、山本は彼に付き纏うという生活を送っている。
彼はいつも不機嫌で、山本の前ではほとんど笑わないし、始終つまらなそうな顔をしている。だから山本はわざと怒らせるようなことを沢山してみていた。苗字呼び捨てに始まり、可愛いとか綺麗だとか下手な口説き文句(いや、でも本音だけど。でもその方が怒られそうだ)を言ってみたり、抱き着いたり。
生来群れるという行為が大嫌いらしい彼は、そうすると大底暴力を奮ってくる。そしてそれは、毎度ながら容赦が無く理不尽なまでの痛みを齎してくる。
それでも、自分が吐き出した血に彼が興奮して口元を歪めるのを認めると、山本は堪らなく背筋に何か冷たく心地良いものが走り、生きていてよかったかもしれないと思うことになるから救いようがない。自分は相当、おかしいという自覚もあるといえばあった。
そういえば、この間殴られた時に切った口の中は、まだ痛い。思い出したようなズキリとした鈍痛に少しだけ顔をしかめる。
なんて書こうかな-とうんうん唸りながらも、在り来りなものは思い付いては消えていく。
となればやはり彼について書くべきじゃないか?
「ヒバリだろ-。ヒバリヒバリヒバリヒバリヒバリ…」
ひたすら名前をぶつぶつ反復しながら、そういやこの間は結構軽くて済んだな怪我。そう思ってから、その時の気まずさを思い出す。
あの時彼は口元を歪め無かった。寧ろ凄く凄く哀しそうな顔をしてた。「ヒバリ?」と山本が呼ぶと、また殴られた。だから山本は訳も分からずに殴られ続けた。それでも前のような威力は一向に訪れなかった。
いや、もっと前からだ。
あの秋の日より、ヒバリが弱くなっていったのは。
山本は一人吐息を殺すようにして笑うことを抑えることが出来なかった。
そうして黄色い短冊を手にとる。
そうだ、もっと弱くなればいい。戸惑ってしまえばいい。
それでも願ったのは、彼の笑顔。

「好きな人が笑ってくれますように」

明らかに下手くそな蛞蝓が這ったあとが如くの文字で綴られたそれは、黄色い短冊に乗せられ、ただ笹と共にさらさら靡いた。





文章おかしいのはいつものことだ。
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